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 私、お弁当屋さんをはじめました。
 学校を卒業して準備をはじめ、やっと小さなお弁当屋さんを開くことができました。お父さんは不満そうでしたがお母さんは積極的で「自分も手伝う」と言ってくれたので、お父さんも渋々納得しました。
 場所はどこにしようかと考えた末、学生街にしました。あいつの所でみんなが一生懸命といった感じでお弁当を食べている姿が忘れられずに「食べ盛り」って連中に私のお弁当を食べてもらいたくて学生街にしました。
 あいつは卒業後、地元にあるラグビーで有名な会社に入って、これからもラグビーを続けていくそうです。私は相変わらずラグビーのことはよくわからないのですが、あいつと知り合いだというと「サインをもらって」なんて言われるところを見ると結構有名みたいなんですね。「これからは時々食べに来てやるから俺のサインした写真を飾っておけ」なんて言っています。あいつが中学の遠足の時に私のお弁当を取って逃げようとして池に落ちたときの写真でも飾って置いてやろうかな。
 それにしてもあいつはいつまで私のお弁当を食べ続けるつもりなんでしょうね。ひょっとしたら、これからもずうっと食べに来るつもりだったりして。それならそれで私も一生懸命特別のお弁当を作ってあげるけれど。でも、お弁当を作るだけでいいのかなぁ。

 大学を卒業して俺はこの町にあるラグビーで有名なO社に入社しました。ラグビーのおかげであちこちの会社から誘ってもらえたんだけれど、その中からこの町にある会社を選びました。
 俺の実力ってかなりのものだと自分でも思っているし、チームの人達も認めてくれて期待しています。その期待を裏切らないようにがんばってみるつもりです、いつかきっと日本一の選手になれると信じて。
 それにしてもチョットしたきっかけで始めたラグビーが自分の進むべき道を決めてしまったなんて“きっかけ”というものに不思議なものを感じます。あいつだって俺に弁当を作ってくれたことがきっかけで弁当屋をはじめたんだから。いや、俺があいつの弁当を摘み食いしてやったおかげと言うべきかな。とにかくあいつも自分の進むべき道を見つけることができて俺もうれしいです。
 同じ町にいることだし、これからちょくちょく食べに行ってやるつもりです。そうだ、俺の部屋に配達してもらおうかな。ついでに部屋の掃除なんかも頼んだらやってくれるでしょうかねぇ。

 
つなぎのカット
 
 よく、ここまでお付き合いいただきましてありがとうございました。
一応この話はここで終わりますが、この後この二人はどうなるのでしょう。 続きはご自由にご想像下さい。

 


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